日本に来たら知っておきたい、畳のマナーとは?
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日本独特の作法、畳のマナーって?
伝統的な日本の家屋にみられる部屋のひとつとして、和室があります。日本の家にお邪魔した際、まずは和室に通されることもあるでしょう。和室に入ってまず目につくのは、床一面に敷き詰められた『畳』の存在です。
畳の部屋に足を運んだ際には、気を付けて欲しいマナーがあるのです。よく言われているマナーの作法として、畳のヘリを踏んではいけない、畳の上ではスリッパを脱ぐなどがあげられます。なぜ、それらのマナーに注意しなければいけないのでしょうか?
畳のマナーは、実は日本人でもよく知らない人が多いのです。知っていても、つい立ち振る舞い方を忘れてしまうこともあります。まずは畳そのものを知り、畳でのマナーを学んでおけば、所作の美しさを褒めてもらえることに間違いありません。
今回は日本の和室を訪れたときに役に立つ、畳のマナーについてご紹介します。
畳ってどんなもの?
香り高い日本の伝統的な床材
畳は、日本の和室に使われている伝統的な床材です。現在はダニや日焼けなどに強い素材ものも増えていますが、従来はイグサという細長い茎の植物と糸を編み込んで、畳表(畳の表面)を仕上げます。
イグサで作られた畳には、独特の青々しい香りがあります。このイグサの爽やかだけれど優しい香りは、和室の落ち着いた内装と相まって心を穏やかにさせてくれる効果があります。和室のファンになる方も多く見られますね。
畳の敷き方は?
畳はカーペットのような一枚布タイプではなく、長方形、または正方形のサイズのものを部屋の寸法に合わせて敷き詰めて使われています。畳の敷き方は、現在の家屋では『祝儀敷き』といわれる畳の角が1か所に集まらないようにする形が一般的です。また、葬儀などでは、敷き方を変えた『不祝儀敷き』にすることもあります。
畳のルーツ
畳は、世界に類を見ない日本独自の文化といわれています。古代の畳は植物を編み合わせた薄い敷物で、使わないときは畳んで部屋の隅に置いていたことが、『たたみ』の語源になったともいわれています。
平安時代には貴族の間で、現在の厚みのある「畳」が利用されるようになり、鎌倉時代にはベッドや座布団のような意味合いから床材へと変化していきます。室町時代には畳を敷き詰めた「座敷」が広まり、その後、茶道をたしなむ人が増えたことから様式などが定められていきました。
畳のマナーを知っておきましょう!
畳の上ではスリッパを脱ぐ。その理由は?
畳の上を歩く時は、スリッパを脱ぐのが日本でのマナーです。スリッパを履いたままで畳を踏むことに、あまり良い顔をしない日本人も多く見られます。その理由のひとつに、スリッパを履いて移動する廊下と脱いで過ごす和室とを区別することがあります。
廊下は動き回る場所で、そこに留まって過ごすことはありません。畳が敷かれた和室は、寝たり座ったりして寛ぐ目的の部屋です。このように、目的によって部屋を区別することは日本人独特の感覚です。
また、スリッパで足を引きずるように歩くことで畳が傷み、汚れてしまうという理由もあります。天然のイグサから作られている畳は、汚れや水分が付着すると傷んでしまいます。それらのトラブルを防いで、畳を長持ちさせるためにもスリッパを脱ぐ必要があるのです。
畳の上を裸足で歩くのも好ましいものではありません。上述と同様に素足の汚れが畳を傷めてしまうことを心配されるからです。日本で和室に入る際は、靴下を履いていく。もしくは靴下をすぐに履けるように携帯しておくことが望ましいマナーです。
畳のヘリを踏んではいけない
畳の縁(ヘリ)とは、畳の角が摩耗することを防ぐため、また畳を敷き合わせる際にできる隙間を埋めるために付けられた布のことです。畳のヘリの布は、昔は身分によって模様や色が分けられていましたが、現在では個人の好みで色選びを楽しめるようにと変化しています。
畳のヘリを踏んで歩かない、というマナーがあるのはなぜでしょうか?その理由には諸説あり、ヘリの模様は権威の象徴で、敬意を払うとの意味があります。ヘリには家紋や動植物などの模様が織り込まれていることが多く、「家紋を踏めばご先祖様に失礼にあたる」、「生き物を踏むのは良くない」との教訓も含まれています。
また、畳のヘリは弱い部分なので、踏むと色落ちして擦り切れたり、傷んでしまう。ヘリと畳との段差につまずいて転倒してしまうことへの注意喚起もあります。このように、畳に関するマナーには合理的な意味合いも込められているのです。